カルチャー

アフリカでチョコバナナを売る日本人が「生みの親」に会いに行った結果→90歳の社長が想像の10倍パワフルだった

日本から約12,000km離れたアフリカの国、マラウイ。その北部の小さな町カタベイに移住を決め、チョコバナナ屋をオープンしたTakahiroさん。

前回のインタビューを終えて、彼からあるメッセージが届きました。

「実はお店を始めようと調べていたとき、チョコバナナの生みの親がいることを知りました。

日本発祥のチョコバナナをマラウイから世界に広めていくために、ぜひ話を聞いておきたいんです。もしアポが取れたら、同行してもらえませんか?」

その後、彼はチョコバナナの開発者の元へ想いを込めた直筆の手紙を送り、見事コンタクトに成功。

今回は、Takahiroさんのチョコバナナのルーツをたどる新たな旅に、ライター・蘭ハチコが同行しました。

チョコバナナの故郷を訪ねて栃木県へ〜伝説の発明者に会いに

舞台はアフリカから一転、日本の栃木県小山(おやま)市へ。

お菓子をはじめとする食料品の卸売業を営む、榊屋(さかきや)株式会社へ向かいます。ここにチョコバナナをこの世に生み出した、伝説の人物がいるんです。

目的地に近付くにつれて、言葉数が減り、心なしか表情もかたくなっていくTakahiroさん。

「そりゃ緊張しますよ!今や縁日定番のスイーツを生み出した方ですよ?レジェンドですよ、レジェンド!」と早口でまくし立て、胸の高鳴りを抑えきれない様子です。

そして、足早に歩くこと数十分。ついに、対面の時がやってきました。

チョコバナナの生みの親・小林文雄社長が語る誕生秘話

「ようこそおいでくださいました!」「お手紙ありがとうございます!いやぁ感動しましたよ、まさかアフリカでなんてねぇ」

満面の笑みで出迎えてくれたのは、榊屋の代表・小林文雄さん(以下、小林社長)。

この方こそ、あのチョコバナナを生み出したご本人なんです。

御年90歳。背筋はシャキッと伸び、語り口は軽快。初対面とは思えないほど気さくで、話し始めるとそのエネルギーに引き込まれます。

「本日はお時間を頂戴し、ありがとうございます!マラウイでチョコバナナ屋を始めたんですが……どうしてもレジェンドにお会いしたくて」

にこやかな雰囲気に、Takahiroさんの表情も徐々にほころんできました。

それから小林社長が語ってくれたのは、チョコバナナの原点の物語。

小林社長は戦後すぐに集団就職で上京し、24歳で独立。栃木の「小山ゆうえんち」にお店を構えました。

遊園地らしいメルヘンなお菓子を模索中にひらめいたのが、バナナを半分に切ってチョコレートでコーティングするアイデア。

まだバナナが高級品だった1964年。見た目の可愛らしさと手軽な美味しさが話題を呼び、子どもたちの人気を集めました。

その後もユニークな商品を次々に生み出し、メディアにもたびたび登場。やがて“縁日グルメ界のエジソン”と呼ばれる存在になったんです。

企業秘密まで公開!?世代も大陸も飛び越えたチョコバナナ対談

ここからは、日本でチョコバナナを生み出した小林社長(社長)とアフリカ・マラウイでその味を広めるTakahiroさん(T)による世代を超えた対談をお届けします。

社長「まさか何気なく作ったチョコバナナが、アフリカでも食べられるようになるなんて。驚きです。行動力をお持ちのTakahiroさんとこうやってお会いできるのは、ミラクルだと思っています。作ってよかったなあと感じますね。

人生、何か特別なことしてきたつもりじゃないけど、チョコバナナの“生みの親”って言えば、私の名前が出てくる。それが私のひとつの“力”なんじゃないかなって思っています」

T「日本でチョコバナナを知らない人はいないですもんね。マラウイにはチョコとバナナはあるんですけど、チョコバナナはなくて。お店では、子どもたちが目を輝かせて食べています」

社長「そうですか、それはよかった!」

T「みんな最初は見たことない食べ物だから、おそるおそる食べるんですけど、ひと口食べたら『美味しい!』って」

社長「いやあ、よかったですね。うん、うれしいです。子どもたちに、そうやって喜んでもらえるのが一番です。海外にも広がるとは、自分でも想像していなかったですよ」

T「僕が売っているチョコバナナを見てもらえますか?」

Takahiroさんがスマートフォンを取り出すと、そばにいた総務部・加藤さんも思わず身を乗り出して覗き込みます。

社長「ああ、なるほど。こういう風にやっているんですね」

T「そうなんです。子どもたちが食べやすい小さめのサイズして、価格もお小遣いで買えるくらいに設定しました」

Takahiroさんがマラウイで作ったチョコバナナ

社長「いいじゃないですか。それが一番ですよ。僕もね、最初に考えたときは楽しい、美味しい、手に取りやすいっていうのを大事にしていたんですよ。

こうやって遠く離れた場所でも同じように喜んでもらえるのは、本当にうれしいことです」

T「ありがとうございます。社長の想い、しっかりマラウイに届いてます」

ここで少しの間があり、Takahiroさんは神妙な面持ちで切り出しました。

T「ただ……実は困っていることがありまして。僕がいる場所には温度を一定に保つ機械がないので、チョコを溶かすのに七輪を使っているんです。でも、バナナにかけたときに、なかなか固まらなくて。何かコツはありますか?」

社長「それはね、まず〇〇〇するんですよ。それから△△△して。そこから◇◇◇◇するとうまくできますよ。これが秘訣……おっと、これは企業秘密にしておいてください」

T「えっ!その方法は初めて聞きました。僕もいろいろ調べたんですが、どこにもそんなやり方は載っていなかったです。そんなコツがあっただなんて……。教えてくださり、ありがとうございます!」

目から鱗の方法に、Takahiroさんの声も思わず大きくなります。

社長「せっかく遠くから来られたんだから、お土産がなくちゃね(笑)」

T「マラウイでも実践します。こうなったら、僕は社長の弟子ということで、ぜひ認定を!」

それはちょっと図々しいんじゃ……と思いきや社長はすぐに頷きます。

社長「もちろんです。認定しますよ(笑)」

なんという懐の深さでしょう!

社長「僕はみんなを喜ばせる花咲かじいさんを目指していたんですけど、自分が撒いた種がいろいろなところで花を咲かせてくれている。まさに、そんな感じがしていますよ」

T「花咲かじいさん!!“縁日グルメ界のエジソン”とも呼ばれていますよね」

自社商品への愛情を表現する小林社長

その言葉に社長は肩をすくめながらも、うれしそうに笑います。

社長「ははは。そう言ってもらえるのはありがたいですね。でも、言われているだけじゃダメで、しっかり次も考えないといけないなって思っています。

今日もちょうど新しい商品の営業に行ってきたんですよ。プレッシャーですけど『エジソン』なんて言われてる以上は、ボーっとしていられない(笑)」

人生の大ベテランになっても次の一手を考え、自ら足を動かす。その姿に、なんだか「自分ももっと頑張らなきゃ」と背中を押された気がしました。

実演!これが本家のチョコバナナだ

榊屋では現在、『チョコバナナ愛ス』という冷凍アイスを販売中(卸のみ)。

しかし、我々はどうしても小林社長の作るオリジナルのチョコバナナが食べたくて、市販のチョコバナナ手作りキットを持参しました。

おそるおそる、作ってもらえないかと伺うとご快諾。なんと菓子製造工場にお邪魔させていただきました。

圧巻の手さばきに思わず見惚れてしまう

シャッ、サッ、トン。

きびきびとした動きでバナナを加工する小林社長。迷いのない動きに、思わず息をのみました。

「今では市販のキットなんてあるんだね。これ(キット付属の串)は短いから、うちにある串で作ろう」「やっぱり〇〇(企業秘密の方法)をしていないと、チョコが落ちてしまうね」

慣れた手つきで作業を進め、あっという間に完成しました。

「こういうチョコバナナ用のプレートも私が作ったんだよ。串を刺したらキレイに見えるでしょ。どうぞ召し上がって」

「ありがとうございます!いただきます」

パクリ!

「社長!今までで1番美味しいです!」

市販キットのチョコレートや装飾を使ったため、小林社長が当時作っていたものとはもちろん異なります。

ですが、生みの親が作ったチョコバナナ。その特別なスパイスのおかげで、なんとも感慨深い味わいです。

このひと口、この余韻。一生忘れません。

一度きりの人生だからこそ楽しく

90歳を迎えた今もなお、新商品の開発に情熱を注ぎ、新規の営業に飛び回る小林社長。

その衰えを知らない行動力に、思わず「そのエネルギーはどこから湧いてくるんですか?」と聞かずにはいられませんでした。

「これまでにないものを生み出して、しっかり形にする。それを続けていれば、自然と次のアイデアが湧いてくるんです」

そう笑いながら語る口調は穏やかでありながら、その奥には確かな信念が宿っています。

「とにかく、人生一回しかないんだから楽しくなきゃね。こうしてみなさんとお会いできて、自分のやり方や商品を知ってもらって、役に立ててもらえること。それが何よりの喜びです」

言葉の端々に芯の強さと謙虚さがにじみ出ていて、胸にずしんと響きます。揺るがない想いと出会いを大切にする姿勢こそが、きっとそのエネルギーの源なのでしょう。

本物のチョコバナナ、本物のレジェンドでした

榊屋をあとにしたTakahiroさん。興奮冷めやらぬ様子でこう語ります。

「いやぁ、すごかった!とにかく若々しくエネルギーがみなぎっていて……次から次に出てくるお話に圧倒されっぱなしでした。本物が作った本物のチョコバナナを味わえて感無量です。一生忘れられない一日になりました」

「小林社長、また必ず会いに行きます!本当にありがとうございました!」

チョコバナナが繋いだ、マラウイと日本。90歳の発明者と、遠く離れた国で奮闘する若者が出会い、まさかの師弟関係が誕生しました。

Takahiroさんのチョコバナナをめぐる旅はまだまだ続く(!?)かもしれません。

Takahiroさんの活動は以下のリンクをチェック

Instagram:@takahiro_yamakawa

YouTube:@世界最高峰の暇つぶし

榊屋株式会社

公式ホームページ:魅惑スイーツ さかきや

Instagram:@sakakiyajp

YouTube:@榊屋-魅惑スイーツさかきや

X:@sakakiyajp

ABOUT ME
蘭ハチコ
スパイスのようなちょっぴり刺激的なモノ・コトが好きなフリーランス。世界60カ国以上を旅したバックパッカー。カレーを食べたり飲み歩いたりしています。 ◆歓迎分野:旅行/医療/グルメ/インタビュー/カルチャー全般 ◆資格:看護師免許/YMAA認証マーク資格試験合格/教員免許 ◆経歴:学習塾/営業職/看護師